登場人物 紹介


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岩崎達也(主人公)

 本作の主人公(お兄ちゃん)。
 幼い頃、母親の再婚で新しい父親とその連れ子である優香と出会う。

 当時は意識をして父親の後ろにばかり隠れていた義理の妹・優香。
 だがそんな彼女が、達也に心を許し、「お兄ちゃん」と呼ぶまでにそれほど
 時間はかからなかった。

 そしてまだ甘えたい盛りに両親を病気で失い、達也は優香の兄として、
 親代わりとして生きていくことを誓う。

 しかし一方の優香は、思春期を迎えた頃から心を閉ざし、義理の兄妹である
 自分たちの関係を「他人」の一言で済ませてしまう。

 いつからか、俺のことを『兄貴』と呼ぶようになった優香……
 俺はその短い三文字の響きが怖かった。

 血縁のない義理の妹は、次の瞬間から俺のことを兄とは
 呼んでくれなくなるかもしれない。

 そして、次の瞬間から……。


 両親を失い、血縁がないゆえに唯一の身内である優香との関係を必死に
 つなぎ止めようとする達也。

 そこへ現れる、過去の妹と同じ面影を持つ少女。

 過去、現在、そして未来……
 彼らが紡ぐ、「ある、兄と妹の物語」の結末は――。

 
…俺は怖かった。

 いつか目の前にいるこの妹が、『部屋には帰らない』と
 口にする日が来るんじゃないかと。

 俺の元を離れて、自立をして、それっきり赤の他人に
 なってしまうんじゃないかと……。

 優香が俺のことをどう思っているのかは分からない。

 でも俺にとって優香は、この世に二人といない大切な
 妹だった。


 たとえ、始まりは別々の両親からだったとしても……。

 

-主人公(お兄ちゃん)について-

本作の主人公は、数多くある「お兄ちゃんの美学」からひとつの
要素に特化させています。

主人公は妹が何か問題を起こすたびにペコペコと周りの人間へ
頭を下げ、そのことを優香にも「情けない」と軽蔑されています。

しかしお兄ちゃんは、どんなに軽蔑されようとも、
妹のために頭を下げ続けます。
そんな彼ですので、いきなり妹に暴力を振るったり、
ひどい意地悪をするなどということもありません。

本作ではそうした、妹から「情けない」と軽蔑され、
私生活でも昼行灯を気取っているお兄ちゃんが、
妹の知らない場所で、締めるべきところを締める」という
生き方をシミュレートしています。

そして物語中で語られる、数多くの兄と妹のエピソードは、
あなたの心に時には優しく、時には切なくその余韻を残して
いくことでしょう。

あなたは妹が初めて補助輪なしの自転車に乗れた時のことを
覚えていますか?
修学旅行であなたが留守をしているとき、妹がどんな気持ちで
部屋に残っていたか、知っていますか?


妹はお兄ちゃんという「ブランド」に惚れるわけではありません。
あなたが「お兄ちゃん」だから惚れるのです…。
 


 

「多分、お前には男らしいアニキでいてほしいんじゃないか?」

「…………」

「昔のお前を知ってる妹としては…な」

 

 

「アニキ…?」

「優香は離れてろ…」

「…………」

「なるほど。
 どこにでもいる、ただの優男かと思ったが…」

「…………」

「どうやら、とんだ食わせ者だったようだな…」

「ここで、昔の借りを返そうと思ったんだが……
 今のお前を見たら気が変わった」

「昔の借り…?」

「気にいらねえんだよ。てめえだけ、ぬくぬくと
 温室暮らしをしてやがるのが…」

「!?」

「オレとお前は同類だ……そうだろう?」

 

世界一のお兄ちゃんになりたい貴方へ――。